『旅の始まりと不良少年』


少年が意気揚々と旅の一歩を踏み出したときです。
上空に不穏な気配を感じました。少年ははっとして飛び退きます。
ひゅるるるるる……テンテ・テテテレ・テンテン〜♪
何だか軽快にリズムと共に、空から、回転しながら、
おじさんが降ってくるではありませんか!
呆気にとられる少年の前にすたりと着地すると、おじさんはにかっと微笑みました。
「撮るのも早い!駆けつけるのも早い!天才写真家で〜す。
 思い出の写真を撮りますからね〜。」
(なんだろうこの人?)
「はい、こっちを向いて〜。チーズ・サンドイッチ!」
反射的にピースしてしまいました。
「お〜、イイ写真が撮れた!この写真はきっと最高の思い出になりますよ〜!」
ひゅるるるるる……
そしておじさんは、回転しながら再び空へと上っていきました。
(妖精さん……?)
少年はおじさんを見送りました。

旅に出る前に、寄らなければ行けない所があります。ホーランドさんの家です。
「見せたいものがある」ホーランドさんはそう言っていました。
少年はホーランドさんの家へ行ってみました。
「やぁ、ネスちゃん。俺はトレージャーハンターとして、地下を掘ってたんだけどね。
 掘っているうちに、すっごいものを見つけてしまったんだよ。見せてあげよう。」
少年は家の地下に案内されました。やっぱりもんわりとニンニクの匂いがします。
少年が追いつくのも待たず、ホーランドさんはどんどん進んでしまいます。
見失わないよう必死です。やがて、地下道の一番奥に尽きました。
そこには……

――怪しく輝く、黄金の像がありました。

「こいつはきっと、もの凄く価値のある物なんだ……」
ホーランドさんは呟きました。少年は黄金の像を見つめました。
金ぴかでとっても綺麗ですが、なんだかとっても、嫌な感じがしました。
「さぁ!もう出てってくれ!」
突然ホーランドさんが言いました。
「俺は発掘を続けなきゃならないんだよ。アンタだって……
 よからぬことを企んでるとも限らないし……」
「よからぬこと?」
少年は首を傾げました。ホーランドさんは黄金の像を庇うように立っています。
(そんな重たい物、子供に運べるわけ無いのになぁ。)
少年はホーランドさんに追い立てられるようにして家を出ました。
(自分で来いっていったのに。)
ちょっとムッとしましたが、少年にはおじさんの夢に構っている暇はありません。
(そう、僕は、世界を救わなくちゃ。)
少年はホーランドさんの家を振り返って言いました。
「発掘頑張ってね。お仕事も、見つかると良いね。」
トレージャーハンターという看板が、がたりと音を立てて傾きました。

まず少年が行かなければならないのは、
ブンブーンの遺言にあった「ジャイアントステップ」です。
(でも、どこにあるんだろう?)
てくてく歩いていると、女の子が立っていました。
「すみません。ジャイアントステップってしってますか?」
「そうねぇ……わからないことがあるなら、図書館で調べてみたら?
 今なら街の地図も貸してくれるわよ。」
(今じゃないと貸してくれないのだろうか?)
疑問を抱きながら、少年は目の前の図書館に入ります。
「ハーイ、オネット図書館にようこそ〜!」
テンションの高い受付のお姉さんに呼び止められました。
「子供に貸せるのは街の地図くらいだけど、楽しんでいってね〜」
(ふ〜ん。ここは成人向けの本ばっかりだったんだ。知らなかった。)
何か誤解を呼ぶようなことを考えながら、少年は街の地図を借りました。
外へ出て、地図を広げてみます。なるほど、ジャイアントステップの場所は分かりました。
「そうだ!秘密基地。」
図書館の裏には、友達と作った秘密基地があるのです。
「お、ネスじゃん!」
近くに行くと、友達の一人が駆け寄ってきました。どうやら彼は見張りのようです。
「え?何?見張り代わってくれるの?」
(え……)
少年はあからさまに困った顔をしました。
「冗談だよ冗談!これは俺の仕事だからさ。寄って行けよ。みんな来てるんだぜ。」
友達はばしばしと背を叩きながら、からから笑いました。
少年はほっとして、草をかき分け、秘密基地に入ります。
そこにはいつも通り、三人の友達が遊んでいました。
「お〜!ネス。今日も来たか。野球やろうぜ〜。」
みんなわらわらと寄ってきてくれたので、少年は嬉しく思いました。
(やっぱり友達って、こういうもんだよなぁ。)
少年の頭に、ぽっちゃり系のお隣さんが浮かびました。
(とも……だち?)
「ちゃんとバットも持ってきてるな。よしよし。」
友達にバットを抜き取られ、少年ははっと我に帰りました。
「だ、駄目!それは使うんだよ。」
「だから、野球するんだろ?」
少年は首を振りました。
「いろいろ、殴打したりとか。」
友達三人はぽかんと口を開きました。
「や、やめとけネス!犯罪は割に合わん!」
「お袋さんを泣かすんじゃねぇよ!」
「ムカツク奴が居るなら、俺等が落とし穴とか掘ってやるから!
 誰だ!?言ってみろ!あのまるっこい奴か!?」
少年はぶんぶん首を振り、ブンブーンの言っていたことを話しました。
「ほ、ほぅ……」
やっぱりちょっと難しかったようで、みんな半分くらいしか分からないようです。
「お前、大変なんだな……。よし!」
友達のひとりが、何か奥の方をごそごそし始めました。
そしてくるりと振り返ると、少年の野球帽をとり、
代わりにぽすっと、何かを頭にかぶせました。
「お前が欲しがってたミスターの帽子。やるよ。」
ミスターとは、少年なら誰もが憧れる野球選手です。
「い、いいの?」
「これはお前にこそ相応しい。持って行け。」
友達は子供とは思えぬ渋い顔をして頷きました。
「お前、旅って言っても、時々はお袋さんに電話しろよ。」
別の子が言いました。
「おふくろさん?」
「ママってことだよ。俺、見た目は子供だが、考えは老けてるんだ。」
少年は気の毒そうにその子を見ました。
「黒の組織に……。」
「いや、コナン関係ねぇから。とにかく頑張れってこった!
 この秘密基地のお前の席は、いつでも取っておくからよぉ!」
友達に見送られ、少年はジャイアントステップを目指します。

そして着きました。が……
ジャイアントステップへ入るには、ある旅芸人の小屋に入る必要があります。
そこの壁が壊れていて、裏手にある抜け道に入れるようになっているのです。しかし、
「あ〜、困った困った。」
その旅芸人二人が、小屋の前でうろうろしています。
(どうしたんだろう?)
少年が近づいていくと、
「「聞いてくれよ少年!」」
何も聞く前に、二人に少年は囲まれてしまいました。
「久々に地方巡業から戻ってみれば!」
「小屋に鍵が掛かって入れない!」
「鍵を掛けたのは市長のピカール!」
「我々の留守中に街の不良共がここを溜まり場にしていたらしい!」
「「ジーザス!どうしたらいいんだ!!」」
両側から喚かれ、少年はくにくにと耳を揉みました。
「僕が市長さんに聞いてきてあげるよ。鍵返してって。」
「「ジーザス!なんて心優しい少年なんだ!」」
少年はちょっとおかしくなったかも知れない耳を揉みつつ、市役所へ向かいました。

街へ出ようとしたとき、
「ウ〜……」
犬が行く手を阻みました。少年はブンブーンの言葉を思い出しました。
「この世界の悪しき心を持つ者達が、お前の行く手を阻むじゃろう。
 それもまた、ギーグが奴等の悪の心を刺激するからなの、じゃ!」
どうやらこの犬は敵のようです。よくみれば、餌をあげたことのある野良犬でした。
なんと恩知らずな犬でしょう。犬が襲いかかってきます!少年はバットで応戦しました。
「YOU WIN!」
ちょっと引っかかれたりしましたが、なんとか勝つことが出来、
犬は大人しくなりました。文字通り、尻尾を巻いて逃げていきます。
(可哀想なコトしたかな……?)
少年が犬を見送っていると……
「あー。」
不意にリュックが少し持ち上がりました。
「うん?」
振り返ると、真っ黒な影が、飛び去っていきます。カラスです。
そのカラスが加えているのはなんと、折角貰ったクッキーではありませんか!
「………。」
少年は、無言でバットをぶん投げました。
ごめすっ!
見事命中し、少年はクッキーを取り返しました。
(戦場で、油断は命取り……)少年はひとつ学びました。
丁度お腹も空いていたので、クッキーはその場で食べることにしました。

「旅小屋の鍵が欲しいだって?」
市役所の人は、片眉をぴくりと上げました。
「あそこはシャーク団の奴等の溜まり場になって居るんだ。開けるわけにはいかないな。
 それに、ピカール市長は忙しいんだ。さぁ、帰った帰った!」
追い返されてしまいました。
(地球の危機を救うことより、市長がやらなきゃいけないことってあるの?)
少年は、今ほど選挙権が欲しいと思ったことはありませんでした。
さて、困りました。ジャイアントステップに行くには、旅小屋の鍵がいります。
でもシャーク団のせいで、小屋の鍵を市長が閉めてしまいました。
(そうか。シャーク団を殲滅すれば良いんだ。)
少年は街の人たちに聞き、シャーク団の溜まり場になっているという
ゲームセンターへ向かいました。



「ああ?おめっあんだよぉ?」
少年は案の定、不良達に取り囲まれました。
交通安全丸出しの黄色いリュックを背負った子供が、
不良の溜まり場に入ってきたのだから当然です。
シャーク団は何故か殆どみんな真っ黒で、変な丸いサングラスを掛けています。
それがまわりにずらーっと並ぶと、なかなか圧巻です。
「ってっと、っで、っすおぉ、ああ!?」
(異国語?)でもなんだかとても怒っているのは分かります。
少年はバットを構えました。
「お?やる気?ケケッ、イイネイイネ、やっちゃうよぉん?」
にたにたと迫ってくるシャーク団。
「やっほぅい!」
シャーク団の一人、おちょうしものキッドがフラフープを振り回しました。
少年はバットで応戦します。
こき〜ん。
「へ…?」
なんとバットは、フラフープで一部が欠けてしまいました。
(合金フラフープ……?)
という訳ではなく、ボロのバットだったせいでしょう。でもこれはまずい事になりました。
「ケケケ!そのバットで応戦する気〜?ひゃははははっ!!」
(う〜……)
少年は回れ右をし、猛然と駆け出しました。
「待てコラ!逃げんじゃねぇよコラ!止まれコラ!」
止まれと言われて止まる人はいません。少年は上手く逃げることが出来ました。

(はぁ〜……)
疲れました。少年は街角のドラッグストアの辺りまで逃げてきました。
流石にもう追ってこないようです。
(お腹へった……)
クッキーはもう食べてしまいました。食べ物は持っていません。
一回家に帰ろうかと思いました。帰ればきっとママがハンバーグを作ってくれるでしょう。
しかし、まだ旅に出て初日です。
(プライド……)
少年はよろよろしながらドラッグストアに入りました。
そこには、あるものがありました。キャッシュディスペンサーです。
パパの言葉を思い出しました。そうです。お金を引き出して、食べ物を買えばいいのです。
少年はキャッシュカードを差し込みました。
「イタッシャイマセ。」
機械音と共に、ディスペンサーが喋り出します。
(オヒキダシっと。)
少年は入っていた50ドル全部引き出しました。そして早速、レジに向かいます。
「いらっしゃいませ。」
店員さんが店の品物一覧を見せてくれます。そこで、少年は固まりました。
煌々と輝く文字。
「ふつうのバット―48ドル」
「………。」
散々悩んだ挙げ句、少年はバットを買いました。でも2ドルじゃ他に何にも買えません。
ボロのバットを売ってみましたが、それでも精々買えるのはクッキーです。
それだけじゃ足りません。
ふと、少年の目にある物が飛び込んできました。
ドラッグストアの隣、ファーストフード店・ママメイドハンバーガー。
その脇に置いてある……ゴミ箱。
少年はささっと辺りを見渡し、ゴミ箱を開けました。
ジャン!ハンバーガーがありました!
「………。」
綺麗です。誰も食べてない、包んであるやつです。
周りのゴミも書類の束や何かだったので、汚くないはずです。
でも、ゴミ箱はゴミ箱です。さあ、究極の選択です。
「おいし。」
少年は食べました。MOTHER2において、ゴミ箱からアイテムを見つけるのは、
特に珍しいことではないのです。
すっかりお腹も満ちたところで、新しいバットを掲げ、
少年は再びゲームセンターへ歩いていきました。

「たのも〜。」
少年が声を上げると、シャーク団は再びわらわらと集まってきました。
「何?また来たワケ?キミも懲りないね〜。」
バイクに跨った、はねっかえりキッドが言いました。
「お〜い、お客さんだぜ〜!」
スケボーにのった生意気ボーダーは、仲間を呼びました。
少年はむんっと、バットを構えました。
「ふつうのバットの、露と消えよ!」

「フランク様〜!!」
おちょうしものキッドは、ゲームセンターの裏庭に転がるように飛び出しました。
そこには、金髪をオールバックにしたマッチョな男が立っていました。
「ああん?俺は今、愛と平和について考えてるんだよ。邪魔すんな。」
派手な赤いスーツにサングラス。ナイフを弄びながら、その男、フランク様は言いました。
「ガキが!バットを持ったガキが乗り込んできやがって!
 そいつがすんげぇ強いんでさぁ!俺等、みんなやられちまって……」
「なんだと?このふぬけ野郎共が!」
フランク様のサングラスが怪しく光りました。
「す、すいやせん!」
「ちっ……そのガキをここに連れてこい。今すぐ!」

その頃少年は、倒したシャーク団の面々と、まったりお喋りしていました。
「俺さぁ、ホントは渋いお茶とか飲みながら、静かに過ごすのが好きなわけ。
 でもそう言うのって若者らしくないだろう?難しいよねぇ。」
シャーク団と少年はふみふみと頷き合いました。
「俺も本当はボランティアとかやりたんだよなぁ。」
「俺は介護福祉士の資格取りたい……」
(みんな大変なんだ。)と少年は思いました。
「おい、ガキ!」
おちょうしものキッドに呼ばれ、少年は振り返りました。
「フランク様が、お呼びだぜ。裏庭へきやがれ!」
その途端、シャーク団にざわめきが走ります。
「フランク様が直々に!?」
「ボウズ、こりゃ大変なことだぜ!?」
「そうなの?」
「ああ、あの人はただ強いってだけじゃねぇ。すっげぇ兵器も持ってるんだ。
 あの兵器を持っている限り、あの人は最強だぜ。」
「ふぅん。」
少年はてくてくと裏庭の方へ歩いていきました。
「ふぅんってお前……ちょっと、人の話聞いてたぁっ!?」
少年は扉を開けました。

「お前か……人のシマを荒らしたバットのガキってのは。」
フランク様は、サングラスの奥から少年を睨み付けています。
「俺はフランクだ。お前、名前は……って聞け!」
木の陰にあった機械を突いている少年に、フランク様は怒鳴り散らしました。
少年は振り返り、フランク様を見上げます。
「おじさん、不良のボス?」
「おじさんっ!?おじさんだとぉ!?俺はまだピッチピチのセブンティーンだ!」
フランク様はぜいぜいと息をしました。
「行儀の悪い失礼なガキには……お仕置きだぜ!」
フランク様はナイフを振り回し、少年に襲いかかります。
フラフープとはやスケボーとはワケが違う、本物の武器での攻撃。少年は防戦一方です。
「どうしたどうしたぁっ?俺の子分共をぶちのめした勢い、みせてくれよ!」
少年はバットを振るいました。
「ほぉう、やるじゃねぇか……次はコイツだ!くらえ、俺様必殺、きたない言葉!」
フランク様は、家族でテレビを見ているときに出てくると、
なんとなく気まずい感じになるような言葉を吐き捨てました。
(うう……なんかやる気が)
少年のガッツが2下がりました。このままでは負けてしまいます。
その時、ふと、頭の中に声が聞こえたような気がしました。
――よ……。PSIを……かうの……よ……
(……?)なんだかよく分からず、少年は自分の頭を触ってみました。
その途端、きらきらとした光が溢れ、少年の傷はすっかり治っていたのです。
(なんだこれ?そうか、これが……)
さっきシャーク団と戦い終わった後に感じた物。何かを手に入れたような感覚。
それはどうやら、この能力だったようです。
「お、お前、回復して……!何だよ今の!」
フランク様が言いました。
「……。ライフアップα。」
「なんだそれ!復活とかきたねぇぞコラ!」
きたない言葉を掛けたのだから、どっちもどっちです。
「おりゃぁあっ!」
SMASHHHHHHH!!!!
少年の攻撃がスマッシュヒットし、フランク様は「ぐはぁっ」と吹っ飛びました。
「くっ……まだだ……まだ俺は負けて……ねぇ。」
「潔悪い。」
「うるせぇよ!俺は倒せても、こいつは倒せるかな?行け!フランキースタイン2号!」
木の陰にあった機械が、ごごごと動き出しました。

「はははっ!こいつが動き出したら、もう止められねぇ。お前は終わりだぜ!」
少年はぐっとバットを握り、フランキースタイン2号をぶん殴りました。
かこぉんっ!
装甲がちょっとへこみましたが、それだけです。フランキースタイン2号は、
激しく蒸気を噴きました。少年は少したじろいで、後退ります。
フランキースタイン2号は突進してきました!少年は慌てて交わします。
「うぉぉっ!?」
後で素っ頓狂な声がしました。どうやらフランキースタイン2号は、
フランク様にもぶつかりそうだったようです。
「スタイン!駄目だろうが、ご主人に向かって来ちゃ!お前の敵はそのガ……」
しゅぽー!!フランキースタイン2号は、「聞く耳持たん」とでも言うように、
蒸気を噴き出しました。
「ねぇ、誰にも止められないって、もしかしてフランクさんも止められないの?」
少年はぽつりと言いました。
「………。はっはぁっ!フランキースタイン2号は最強なんだぜぇっ!」
なんだか気の毒になってしまって、少年はそれ以上何も突っ込めませんでした。
フランキースタイン2号は大暴走を始めました。所構わず突進してくるので大変です。
装甲板で出来ているので、当たるととても痛いです。
少年もフランク様も、HPがどんどん減っていきます。
「ど、どうしよう……」
「うあああっ!!」
悲鳴に少年ははっとしました。裏庭の角で、フランク様が追い詰められています。
逃げ場はありません。このままではぷっちり潰されてしまいそうです。
(ここから走っても間に合わない!)
絶望的な気分になったとき、何故か自然に身体が動きました。
少年はフランキースタイン2号に手を翳し、朗々と叫びました。
「PK・ズバン!!!」
びしゃぁあああっ!!!
凄まじい音と共に、少年の手から光があふれ出しました。
それはフランキースタイン2号に直撃します。
ごぉぉむ!!!ふしゅうぅぅぅぅ……
フランキースタイン2号は、破壊されました。
崩れていくフランキースタイン2号の向こう側。フランク様が呆然としています。
「な、なんだよ……今の。」
「だから、PKズバン。」
「そういう事を訊いてるんじゃねぇ!お前……超能力が使えるのか!?」
少年はちょっと考えてから、
「そうみたいだね。」
と言いました。フランク様は一瞬目を見張った後、豪快に笑い出しました。
「超能力とは恐れ入ったぜ!こいつぁ俺の完敗だ!」
何が面白いのか分からず、少年は目を白黒させます。
フランク様は少年の背をばしばしと叩きました。
「お前、結局名前は何なんだ?」
「……ネス。」
「そうか。ネス、お前はその力で何をしようとしてるんだ?」
少年はぐっと力を込めて、フランク様を見上げました。
「世界を、救う。」
フランク様はさっきよりずっと大きく目を見開くと、もっと大きな声で笑い出しました。
「スケールのデカイ野郎だぜ!恐れ入った!まったく恐れ入ったぜ!」
あんまりバシバシ背中を叩くので、HPが1減りました。
少年はちょっとむせながら離れます。
「無敵のフランクも、今日からただのフランクだ。シャーク団も解散だな。」
フランク様は切なそうに、しかし何処か清々しく言いました。
「俺より強いネス、健闘を祈るぜ!」
少年は、大きく頷きました。

少年は一度家へ帰りました。あんまり疲れたのと、ホテル代の節約のためです。
「何も言わなくて良いの。ママは分かってるつもりよ。
 ハンバーグを食べて、ゆっくりお休み。チュッ!」
ママはそう言って迎えてくれました。
少年はちょっと気恥ずかしく思いながら、翌日も元気よく出かけていきました。
「おはようネスちゃん!また大冒険の始まりね!」
ママはそう言って送り出してくれました。
今日こそ、ジャイアントステップへ行かなければなりません。

シャーク団をやっつけた少年のことは、すっかり噂になっていました。
みんなが少年を褒め称えます。良い気分になって、少年は市役所へ向かいました。
「おつとめご苦労様であります!」
以前は追い出した警備員が、少年に敬礼しました。なんだか複雑です。
「やや!これはお待ちしていましたよ〜、ネスさん!」
そう言って迎えたのは、市長のG・H・ピカール(ゲー・ハー・ピカール)でした。
「シャーク団の悪ガキ共をぎったんぎったんのぼっこんぼっこんにして、
 おしっこちびらせた上、もうしませんと泣いて謝らせてくれたそうですね!」
(噂って怖いなぁ。)
今までシャーク団を放って置いて、街中から散々苦情を言われていたため、
市長はとっても上機嫌でした。少年は市長に言いました。
「はげぴかる市長。」
「逆だからね……。ゲー・ハーだから。なんですかな?」
少年は旅小屋の鍵が欲しいと言いました。
「何?旅小屋の鍵、ですと?いいでしょういいでしょう。お渡ししますとも!
 でも何があっても、私は一切の責任をとりませんらね!わははは!」
(………。)
少年は鍵を受け取りました。
「今度の選挙の時は、市長の応援演説をお願いしますね!」
今度は市長の秘書らしきおじさんが、調子の良いことを言いました。
「……ける。」
「は?何ですかな?」
市長は少年が何かぶつぶつ言っているので耳を澄ませました。
「抜ける………ずれる……死滅する……」
「はぅあっ!?」
「鍵、ありがとうございました!」
少年はぺこりとお辞儀し、さっさと市役所を後にしました。





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